インタビュー記事

サロンインタビュー
商は笑なり
Manager 桔梗 文 (ききょう ぶん)

仙台市の静かな住宅街に佇む美容室ジェンヌ。
「こんにちは!今日はよろしくお願いします。」扉を開けると、マネージャー桔梗文さんの爽やかな笑顔が迎えてくれました。素直で人懐っこい人柄が一目で伝わってきます。今回の取材では、そんな文さんの美容師としての志や、美容室ジェンヌが長年大切に育んできた文化と、未来に向けての“想い”をうかがいます。

 

「きっかけは美容師の兄への憧れ」

「僕は、もともと憧れ体質なんです。」と文さん。
美容師になるきっかけも、純粋な憧れから始まったそうです。

「学生の時に、歳の離れた兄が経営する美容室でアルバイトをする機会があったのですが、そこで働く兄の姿がめちゃくちゃかっこよくて、他のスタッフの皆さんも素敵で、『美容師ってカッコいい!自分も将来こんな風になる!』って、その時に強く思ったんですよね。両親も美容師なので、自分もいずれ美容師になるんだろうな、とは思っていたんですが、その時の経験が僕にとっては一番大きかったです。」

「今でも素敵だなと思う人に出会うと、すぐに『自分もああなりたい』って思っちゃうんですよね。」

この純粋な「憧れ」が、文さんの原動力になっているのかもしれません。

 

「新人時代の挫折」

そんな文さんにも、駆け出しの頃の苦い過去があります。専門学校を出た後、狭き門をくぐり抜けて入った都内の有名サロンでの経験は文さんにとって大きな挑戦でした。

「正直に言うと、逃げ出したんです。そこは美容業界では珍しく福利厚生も充実していて、従業員にとって申し分無い会社でしたが、美容師として上を目指すなら、人一倍頑張らなければいけません。苦労知らずで育ってきた当時の自分には非常に厳しい環境でした。僕以外の周りのスタッフはみんなすごく努力しているのに、僕はついていけなかったんです。自分はなぜこんなに目の前の課題と向き合えないんだろうって相当悩みました。そのうちにどんどん周りと差が開いていき、益々辛くなり、最後は休みを取って実家に帰ってきたんです。そして、そのまま戻らなかった…。自分の甘さを痛感させられた出来事でした。当時のことを思い出すと、今でもモヤモヤと罪悪感が込み上げてきます。同期の仲間と『全員で店長目指して頑張ろうな』って話していたのに。」
近々当時の仲間に会い、きちんとけじめをつけたいと文さんは言います。
「今はもう逃げられませんからね。この場所で一歩一歩成長していきたいと思っています。」

 

「お客様の悩みに応えるための」

ケミカルの勉強が楽しい
文さんが今、最も仕事の面白さを感じるのは「(商品の)ケミカル」を勉強して、商品知識を習得し、お客様の悩みを解決できた時だと言います。

「お客様一人一人の悩みをうかがい、解決できた時はめちゃくちゃ嬉しいです。さらにそのお客さんが、これからずっと『文さんじゃなきゃ』って言って来店してくれることも最高に嬉しいです。」

文さんには、お客様のどんな無理難題も断らずにまずは引き受ける、というポリシーがあります。

「僕はどんなに難しい課題でも『何とかします』と即答するんです。とにかくお客様を笑顔にしたいんです。そのための努力は惜しみません」

このひたむきな姿勢が、お客様との信頼関係を築き、美容室ジェンヌの魅力の一つになっているようです。

 

「仲間との間で大切にしていること」

美容室ジェンヌは文さんの母親が創業しました。現在は長年お客様に支持され続けている数人の女性美容師がメインとなり営業をしています。この安定感がジェンヌの核となっていることは間違いありません。

「スタッフに対しては感謝と敬意の気持ちでいっぱいです。その上で一人一人の状況を察し、各々がモチベーションを保って元気に働き続けられるように、普段から声掛けするようにしています。」

今までは自分のことだけで精一杯だった文さん、マネージャーという立場になって心構えが一段と変わったと言います。

「とにかくみんなが楽しく働けるサロンであり続けたい、それだけです!」

安定のキャリアを持つ女性美容師たちと、文さんの元気な明るさが絶妙なバランスでサロンの魅力を紡ぎ出しているように感じました。

 

「ジェンヌの理念”商は笑なり”」
美容師として、人として、日々大事にしていることを尋ねると、文さんは父親から受け継いだ言葉を大切そうに語り始めました。

「父からは小さい頃から『返事・挨拶・後始末』そして『笑顔・姿勢』ということを叩き込まれました。言葉としてはすごくシンプルなんですけど、大人になった今、改めてすごく大事なことだと感じています。…なので、返事や挨拶、笑顔が無い人には思わずムカっとしてしまいますね。」
この日初めて文さんの口からネガティブな言葉が出た瞬間でした。特に「笑顔」が大事だということは、ジェンヌの理念である「商は笑なり」にも表れていると文さんは強調します。

お客様を笑顔で迎えること、お客様を笑顔にすること、スタッフ間でも互いに笑顔で接すること。このシンプルな想いが、ジェンヌの理念として、文化として根付いています。

 

「”笑顔”が最上位の価値」

「この先も地域に根ざしてジェンヌの『笑顔の文化』を、ずっと絶やさずに継承していきたいと考えています。」

ジェンヌに入って8年、すっかりジェンヌの理念が板に付き「ジェンヌの人」になったと文さんは言います。

「お客様を笑顔にすることは自分次第です。お客様が不満そうな表情をされたとき、以前ならまだ自分は未熟だと、落ち込んで終わりでしたが、今は『自分の何がそうさせてしまったんだろう?』と、ベクトルを自分に向けてしっかりと考察し、お客様を笑顔にするために自分は何をするべきか、事実に向き合い、行動できるようになりました。夢は、美容の力でもっと多くの人を笑顔にすること。僕はまだまだ成長過程です。母や兄のようなカリスマ美容師を目指して前進していきたいです。」

ジェンヌの「笑顔の文化」は、エネルギーに満ち溢れたマネージャーに継承され、確実に明るい未来につながるのだと感じた今回の取材でした。

 


取材日 2024年7月29日
取材:毛利美菜子/撮影:根岸智宏